読書会の課題作で、10代の頃に読んで以来の再読。 Wシリーズを読んでからの100年シリーズ再読はそうか、こういうことだったのか〜という感慨があってとても良かった。Wの記憶も薄くなってきたので再読しなければ。
百年密室、密室部分は本当に酷いけど、社会実験的な近未来SF、幻想的な雰囲気、ミチルとロイディのアクロバティックな真相に良さがあると思うので、けっこう面白い作品だと思う。 今思うと密室部分も本格ミステリから外れようという初期の試みの結果なんだろうな、ということを感じられて味わい深い。これでこそ森ミステリィ。
続編の迷宮百年の睡魔のほうが断然面白いけど。森博嗣も自信作と言っていたし。 あの首切断のホワイダニットはぶっ飛んでいて唯一無二すぎる。
シリーズものの一作目は設計図的な作品になるので手応えがあるのはどうしても2作目以降になる、という話をエッセィでしていてなるほどなあと思った記憶がある。
視覚的に幻想に見せかけて全部SFとして説明できるようになっているのは百年シリーズに通底するギミックなんだろうなあ。赤目姫ってやっぱりそういうことなのか…など森博嗣の先を見通して創作する力にあらためて脱帽した。
読書会ではみんなミステリとしては読んでいないと言っていて、自分としてはそれが軽く衝撃だった。ミステリ作家でタイトルに密室ってあるから普通そこに注目すると思うんだけど…結果的に石を投げられずに済んだのでヨシ。
四季関連シリーズを追っている人の中で森博嗣の小説をミステリとして読んでいる人はけっこう少数派な気がする。 自分自身、森博嗣の思想がおもしろくて読んでるのは当然あるけれど、特にGシリーズのミステリからの逸脱具合は狂おしいほど好きなんだよな…
会では否定的な意見として、
- ミチルが相棒のロイディに対して横柄な態度をとっていることや、ルナティックシティの文化を重んじずに自分の価値観を押し付けるところが嫌い
- 森博嗣の文体が合わない
というのがあった。
自分はミステリ作品の登場人物に感情移入するということがほとんどないので新鮮な視点だった。 推理小説の探偵って大抵、他人の気持ちを考えないろくでもない人間のことが多いのでそれに慣れているというのもある。
森博嗣の文体は良くも悪くも特徴のない簡潔で読みやすい文章だと思っていた(ポエムは癖があるが)けど、小説の文体としてどうなんだと言われると確かに微妙かもしれない。
森博嗣が苦手という意見はいままで聞いたことがなかったので貴重でありがたい。とともに誰しも苦手な作品ってあるよなあとなんか安心した。
読書会で布教用の資料を作ったので公開しておく。 森博嗣布教