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最近読んだ本・ビブリオバトル

『殺人鬼にまつわる備忘録』 小林泰三
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実は小林泰三を読むのは初めて。偉大な先輩だけどなんとなく読んでなかった。人の記憶を操って好き放題する殺人鬼 vs 記憶が30分しか持たない病気のために記憶操作が効かない主人公の話。まさに異能力バトルの漫画的エンタメ小説で、これも広義の特殊設定ミステリと言える? 特殊設定の穴をつく系のミステリは大好物。めちゃくちゃ面白かった。 小林泰三は思ったより読みやすかったし他も読んでみようと思う。

『小説』 野崎まど
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ドストレートな読書家全肯定小説。物語としてとにかくよかったし、自分にとって小説を読むとは?ってのを久しぶりに真面目に考える機会ができたのもよかった。これからも小説を読んで精神を拡張していかないとな。

小説に限った話ではないけど、常に自分の考えはアップデートし続けなくてはいけないと思っている。そのためには本を読んだり他の人の意見を取り入れたりする必要があり、それが読書会を作ったきっかけでもある。 昔は自分の興味のあるジャンルしか読んでいなかったけれど、それではどうしても偏ってしまう。 そういう意味では内海の、究極的に内面的な読書の向き合い方は同意できないな、と思う。

『消滅世界』 村田沙耶香
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生殖のためのセックスが消滅した社会のSF。思考実験的な世界設定なのにめちゃくちゃ現代の話をしていてびっくりした。アイドルや「推し」の文化はまさにそうなんじゃないか(知らんけど)。 結婚と恋愛がひとまとめになっているのは普段から疑問に感じているので、そこが分離されて居心地がいい関係同士で生活してるのはいいなあと思う。 村田沙耶香はどの作品を読んでも「正常という狂気」の話をしていてパターンもかなり似通っている気がする。

実験都市千葉の制度からこの作品をディストピア小説と表現するのは気持ちはわかるけど違うんじゃないかなあと思った。というのも、移り変わる世界の価値観と、どんな世界にも適応できてしまう主人公の話だったから。ユートピアもディストピアも時代や人によって捉え方が違うよねっていう。 まあ、最後は世界そのものに反逆してしまうわけだけど。村田沙耶香、そういう終わらせ方も多い気がしている。

『サーキット・スイッチャー』 安野貴博
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完全自動運転が実現された近未来が舞台のトロッコ問題的な話。SFを期待して読んだらあまりにも現実に近いIT要素モリモリのサスペンスだった。 畑が近いのもあってニヤッと笑えるところはたくさんあったけど、ただただ現実のエンジニアリングの話だなーという印象で、自分がSFに求める飛躍はなかったなあと思う。読後感としては完全にノンフィクションだった。ただ、これは自分がSFだと誤解してただけなので作品に罪はない。

自分がSF小説に求めるものは全く自分が考えていない設定やアイデアにあり、できるだけ自分の想像とかけ離れているものが好きなんだなあと気づいた。というより、これは工学と理学の溝といえるかもしれない。10年先の実用化より100年後のための基礎理論にウキウキしてしまう。その延長でSFを読んでいるところがある。

読書会
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今回は趣向を変えて今年読んだ本ベスト3を紹介するビブリオバトルをやってみた。自分は「ブラインドサイト」「クララとお日さま」「すべての、白いものたちの」を選択。かなり悩ましかった。 本をたくさん読んでる人が集まっているだけあってどれも信頼できるラインナップだった。結果、積読が大量に増えるという嬉しい悲鳴。年末年始にじっくり消化したい。