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12月後半に読んだ本

ハーモニー
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再読。当時はインターネットの知識がなかったのでわからなかったetmlになるほどね〜となれた。 あれはトァンがWatchMeの管理下に置かれていない子供や民族に、人類がハーモニー化してしまった経緯を説明している裏歴史書なんだろうなあと解釈した。 わざわざetmlで表記されているのが昔のwebページでhtmlのソースを見る文化を表現してるんだなって。

劇場版も観たのだが百合要素が過剰になってて笑った。ミァハを撃つ理由も原作とは違って百合強感情になっている。ホラー描写にも凝っていて、これはこれでいい映画化だったと思う。あとARで食べ物のカロリーとかが表示されて警告が出るのは完全にあすけんの女だった。 健康ディストピアはもうすぐそこまで来ている。

トライロバレット
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初佐藤究。会話に「」が使われてなかったりして文体がかっこいい。 三葉虫モチーフのヒーローだったり終盤の展開がかなりB級なんだけど、かっちょいい文体のおかげでB級ぽくなくなってるのがすごい。読みやすくて面白かった。

わたしたちが光の速さで進めないなら
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7つの短編集なんだけど全部エモくて良かった。SFとして読むと物足りなさがあるかもしれないが、異なる他者へのあたたかさや理解しようとする姿勢にじんわりくる。 あとがきの「追い求め、堀り下げていく人たちが、到底理解できない何かを理解しようとする物語が好きだ。(中略)どこでどの時代を生きようとも、お互いを理解しようとすることを諦めたくない」には痺れた。これがこの短編集の全てだと思う。

法治の獣
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「主観者」「方舟は荒野をわたる」を読んでて「ワンの絨毯であったやつだ…」と思ってたら巻末の作品ノートで答え合わせがあった。ファーストコンタクトの倫理。 SF的ギミックには(そうはならんやろ…)と思ったけど、伝えたいメッセージ(異星生物との干渉には極度に慎重にならなければならない)はなるほどたしかにとなった。 「主観者」はファーストコンタクト失敗話として救いがなさすぎて、最も印象に残る短編。

「法治の獣」は設定がもう面白い。異星生物の生態を法に翻訳して運営するコロニーってどゆこと?? 人間が作ったAIに任せるより、自然が生んだ原理を採用する方が人間には受け入れられやすいのは確かにそうなんだろうな〜。とはいえ生き物の生態を法に採用するのが危険すぎるのはすぐ気づくだろ… 進化生物学的ギミックも良い。SF小説で焼きなまし法を目にするとは。進化計算とかやってたんだろうか。

春暮康一、ゼロ年代の影を一切感じないので好き。正直ゼロ年代のノリは苦手なので… あと、ハードな文体とかやたら理知的な会話文でイーガン読んでると錯覚した。イーガンに影響を受けてるのが丸わかりな作家で、今後も注目しようと思った。

航路
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上巻を読んでなんか冗長だな〜と感じてずっと下巻を積んでいた。下巻の途中から怒涛の展開でめちゃくちゃ面白い。そしてめちゃくちゃ泣いた。年末にすごいものを読んだ。 副題をつけるなら「きみに届け…!」か。絶望的な状況でも諦めずに人を救おうとする話は尊い。 ハヤカワSFだけど読み味としては医療ミステリ/サスペンスだった。つまり万人におすすめできる。みんな読んで泣いてほしい。