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オーラリメイカー[完全版]感想

最新作に触れてからデビュー作に触れると粗削り感があるなーというのが正直な印象。

さすがに4視点は多すぎない?? 時代もあっちこっち飛ぶので、ページを行ったり来たりして読書体験としてあまりよくなかった。一億年のテレスコープではこれらの不満点がすべて改善されていたので笑った。作家も日々進歩しているのだ…

ずっと淡々としているので物語としての盛り上がる展開も薄い。“わたし"が登場するのも中盤からで、時間が飛びまくってるのもあって自分には感情移入できなかった。まあこれは年代記ものの弱点と言えるよなー。同じようなことを「はじめてのゾンビ生活」でも思った。 時間が飛び飛びになるとどうしても思い入れがね…

とはいえ、<系外進出>シリーズの一巻としてみると設計図的な位置付けになっていて、これからの広がりに期待できるし、面白い設定が凝縮されているなと感じた。連合とDIの設定だけでご飯何倍でも食べれる。

最後の章は地球のことなんだろうなと思う。最終的に地球に繋げるのは他の作品でもやってるし、40億年前というのが決定的。わざわざ地球標準年を用いてるあたりそうとしか考えられない。まあ、取ってつけた感は否めないけど…

春暮康一、影響を受けたと公言しているだけあって、イーガンに近いものを強く感じる。人間はいくらでも改変・進化できるという思想に基づいた人類賛歌、科学技術への楽観的な態度なんかは特に。同じイーガンファンとして共感せざるを得ない。

最新作の一億年のテレスコープを読んでからデビュー作を読んだのは失敗だったなー。 作家読みで一気に最新作から過去作へ遡る読み方、同じネタをブラッシュアップしてることも多いし、相対的に微妙になっていくのでよくないということを白井智之の時に学んだはずなのに…

逆にいうと作家として進化しまくってると言える。というか全作面白いのは面白いので(最新と比較すると微妙というだけで)、化け物すぎる。

収録されている「虹色の蛇」と「滅亡に至る病」も良かった。 というかこれらの短編の方が圧倒的に読みやすいし、脳内に浮かび上がるイメージも壮大で美しかった。

やっぱり春暮康一が描く変な生き物は最高に面白い。 一生変な生態の宇宙生物を書いててほしいぜ。

春暮康一作品はほぼ全部読んだ(あとピグマリオンのみ未読)けど、全作品が面白い作家って滅多にいないので出会えてうれしい。今後も全力で追っていく所存。