第一部は真面目に脳研究の話をしていて面白かった。ただ、第二部はAI、特にAGIの話題に移り、第三部に至っては、「人類が滅んだ後に地球に訪れた知的生命体のためにどうやって文明の痕跡を残すか?」みたいな話をしだしておもしろSFプロトタイピング集だった。 はっとさせられるアイデアも多くて面白かったー。
ということで、この本はSFです。(断言)
個人的に一番印象に残ったのは、脳をデジタルにアップロードできたとして、それはあまりうまくいかないだろうという予想。
これは第一部の脳研究紹介で、脳の真皮質を構成する細胞(皮質カラム)が座標情報を保存することで世界モデルを学習しているという筆者の仮説に基づいている。
つまり、外世界と作用することで得られる感覚器官からの入力をもとに世界モデルを構築することが知能にとって必須だということ。
脳をそのままアップロードした場合、肉体を持たないので感覚の入力はない。ある程度はシミュレートできるだろうが、それは満足するものにはならないだろう、というのが筆者の主張だ。
自分自身、肉体と精神は完全に切り離せるものではなく、両方があってこそ成り立つものなのでは?という考え方に変わりつつあったので、この意見はかなり納得できると思った。
まあ、いずれにせよ自分が生きている間には実現しない技術だと思うが…
冷静に考えて、何千億個もある脳細胞を完全にコピーできるよう時代が100年以内に来るとは思えない。
前作の「考える脳、考えるコンピューター」も面白かった。 20年近く前の著作だけど、”知能とは予測する能力”という定義はなるほどと思わされたし、未来予想も刺激的だった。しかも、20年経った今答え合わせをすると結構当たっている部分があってすごい。