メインコンテンツへスキップ

『ブラインドサイト』感想

小説としてはそんなにだったけど、高度な知性体にとって意識が必然か?むしろ意識は邪魔なのではないか?という思考実験としては面白かった。

解説でテッド・チャンが

あの作品で述べられていることにはほとんどあらゆる点で同意できないが、それでも一読をお勧めする。あれは同意できないことを確認する価値のある作品だ

と言っていたのは笑った(まあ、そうだろうな…)

ただ、解説での反論はあまり的を射てるとは感じなかった。意識と無意識の解明が進んでない以上、局所最適で意識を捨て去ることができてない可能性は十分ありえるし、この広大な宇宙で意識をもたない高度な知性体が存在していても不思議ではない。ワッツは一つの可能性を提示しているだけで、意識を持っている人間を否定しているわけではないのは言うまでもない。

自分としては、物理法則に従っているのならなんでもOKだと思うし、それこそがSFの醍醐味だと思う。

自由意志と意識の否定。このへんワッツは冷徹すぎるので拒否反応が出る人がいるのもわからなくもない。逆にイーガンは楽観的で人間讃歌な話が多い。自分はどちらも好きだ。

ところで、本作は地球人側のメンバーもかなり濃いものになっている。脳を半分摘出した主人公、4重人格の言語学者、吸血鬼などなど。解説で吸血鬼が十字架が苦手な理由をちゃんと科学的に?こじつけてるのは笑った。設定がよく凝られていてよほどお気に入りなんだろうな。