映画HELLO WORLDを見た。 野崎まどが脚本ということで、また何かやってくれるんだろうなと。
以下ネタバレ全開。(いつものことだが)
まさかの主人公(堅書直実)がイーガンファンの高校生。 本棚にイーガン作品がずらり。順列都市、ディアスポラ、ゼンデギ、白熱光、プランクダイヴ… こんな高校生いるわけないだろ。
まあそれは許すとしても、主人公がとんでもなく素直な性格で、高校生でイーガン読んでるようなやつが素直なわけねえだろ!!というツッコミをせずにはいられない。
高校生で海外SF読んでるとか絶対こじらせてるに決まってるだろ…
で、10年後の自分を名乗る存在が「実はこの世界は保存された過去のデータに過ぎなくて〜」というSF的な世界説明をするわけだけど、「イーガンみたいだな…」ってあっさり流してるのは色んな意味で衝撃だった。
「お前の存在はデータでしかない」と言われてすんなり受け入れられる人間、やばすぎないか…? 少なくともぼくは冷静でいられる自信がない。(めちゃめちゃ興奮すると思う)
10年後の直美の真の目的は「落雷で植物状態になってしまった恋人の一行瑠璃を復活させるために、データ世界の一行さんの人格を持ち出し、現実に移植する」という正直うわあ…なもの。10年後直美、どちゃくそこじらせていて「これだよこれ!イーガン読んでるやつはこうでないと!」と興奮した。
最後のどんでん返しについては、正直まだ釈然としないところがある。
まず、宇宙を開闢することで世界の階層構造から逃れられたはずなのに、そこから上位世界(おそらく現実)にたどり着く理由が謎。開闢とはなんだったのか。やっと逃れられたと思ったのに…
また、実は植物状態だったのは直美のほうで、一行さんが直美を復活させるために低階層の世界で色々やっていたのであれば、それまでの直美と10年後直美のやりとり(仮想世界から人格を持ち出すのはよくないよね。というくだり)はなんだったのか…
うーん、まあ、野崎まどだしな… やりたいことやっただけ説も普通にある。それにしてもぶん投げすぎるだろ、というツッコミはあるが、正解するカドを観てるので…まあ…
スピンオフ作品とか小説版読めば色々わかるのかもしれない。
青春ボーイミーツガール、実写を元にした綺麗な背景、セカイ系…全体的に君の名は。みたいな映画だった。が、それは見かけの話で、中身はけっこうガチめなSFでさすが野崎まど、といったところか。
どうも最初は全く別の硬派なSFものだったらしいのだが、君の名は。があまりにもヒットしすぎたせいで似たような路線になったらしい。(wikipedia情報) 二番煎じ、二匹目のドジョウ… 大人の事情を感じる。
日本ではあまり話題になったイメージはないけど、中国では興行収入20億円のヒットしたらしい。 日本では君の名は。を期待してみた人たちに刺さらず、中国では普通にSFとしてヒットした感じだろうか。
主人公がイーガンファンという設定ということで、確かにイーガン作品の影響は色々感じた。シミュレーションによる仮想現実という設定は順列都市だし、仮想現実に人格を再現しようとするところはゼンデギっぽい(まだ読んでる途中だけど)。データ世界の暴走、という意味では短編の「クリスタルの夜」を感じる。
イーガン以外にも本棚にはディックも並んでいて、現実か非現実(幻想)かわからなくなっていくディック特有の世界観も通じるところがある。
あとは世界内世界内世界…というところでインセプションか。なんだかんだでこれが一番強かったかも。