回樹 #
回樹という魅力的な未知の存在を提示しながらも、出現した真実はほとんど回収されず「主人公の感情を判定する」というあくまでも超個人的なことに利用されているのがとても面白かった。
回樹の性質が並べ立てられ、それを手がかりとして主人公の動機が浮かび上がってくるミステリ。 そういう意味でこの作品はSFでなく特殊設定ミステリだと思う。
特殊設定ミステリとSFの違いは、ざっくりいうと外向きか内向きかで判断している。 ミステリは真実を追求し内側へと向かう箱庭パズルで、SFは外側へ向かう壮大な思考実験という名の法螺、というのが個人的な定義。
冒頭の取り調べから始まるシチュエーションといい、やっぱり斜線堂有紀ってミステリ大好き人間なんだなと思った。そのシチュエーションいいよね。わかる。
不滅 #
こちらは疑う余地のないSF。
特殊な状況になった社会でそれぞれの人間の思想や情念を描く。この普遍性こそがSFの醍醐味だよなあ。
腐らなくなった死体を利用するという悪魔的発想から、それぞれの死生観、未来の人々のために今の人間ができることは?という深い話に持っていくのは流石すぎた。
ドキュメンタリー形式なのはテッド・チャンの「顔の美醜について」をちょっと思い出したり。
SFの傑作短編。