10月5日にテッド・チャン『あなたの人生の物語』読書会を行った。参加者は8人。無事行えたことに感謝。
「あなたの人生の物語」 #
まず20分程度、自分が作ったスライドを見せながら、テッド・チャンや作品についての解説を行った。 反省点としては、物理ネタをわかりやすく解説するはずが、わけのわからない数式を持ち出して、わけのわからない説明しかできなかったこと。一般の人に対して解析力学の解説はそもそも無理な話で、作中で最も理解しやすいフェルマーの原理で説明してたテッドチャンの慧眼に感心した。 物理がよくわからなくても感動できる物語を書けるのがテッドチャンのすごさなんだよな、と再確認。元ネタの科学描写をちゃんと理解できなくてもSFは楽しめるってことは他のSF作品全般に言えることだ。
スライド発表のあとは一人ずつ感想を言ってもらった。印象に残った感想をピックアップすると
- テッド・チャンはゴールを決めて書く人と解説に書いてあって展開の持っていきかたにそれを感じた
- SFを初めて読んだが、時系列が飛び飛びだったり、ペプタポッドBや物理学も難解で理解が難しかった
- 変分原理を知らなかった、現実にそんなものがあるとはびっくり
- ヘプタポッドの造形が面白い。目が7つもあるのは知覚に特化している?瞼がないのは睡眠を必要としていない?人間の上位存在っぽい。放射状の体形から前後の概念がないのも面白い
- 現在進行形の物語は無機質なのに対して"あなた"との回想は色彩豊かに描かれている。ヘプタポッドBを理解するにつれてこの傾向は情緒的にも顕著になっていた。
- やはり最後のルイーズの決断は泣ける。最初と最後のシーンがつながっているのも効果的
などなど。現在と回想の情緒的な対比については全く気付かなかったのでなるほど~となった。こういう気づきがあるから読書会は面白い。
その他の短編について #
今回は表題作のみを課題作にしていたが、ほとんどの参加者が一冊全部読んでいたので(ありがたい)、表題作以外の話にもなった。 特に話が盛り上がったのは「バビロンの塔」「顔の美醜について」。 バビロンの塔は
- 箱庭的世界観で宗教をSFチックに描写するとこうなるんだ!と感激した
- 信仰はあるけれど、この世界に神はいない?そこが面白い
- 天井に穴をあけることで神の怒りを買わないか躊躇しているのが面白い。仕事で上司にお伺いを立てるみたいなものか…
など。たしかに寓話的世界観にワクワクする話だったなあ、と。オチもきれいで完成度高い。
「顔の美醜について」についてはカリーを付けたいか、付けたくないかで投票を行い、激論を交わした。 もしかするとこれが一番盛り上がったかも?いろんな意見があって面白かった。
収録作品すべて質が高く、それぞれ語れることがあって改めてテッド・チャンすごいなと。 『息吹』もいつかやれたらいいなと思う。
次回について #
次の課題作はサリンジャー『ナイン・ストーリーズ』(野崎訳)で開催予定。 個人的に海外文学はほとんど読んだことがないので新鮮だ。扱うジャンルを限定していないので、今後も課題作に何が選ばれるのか予想できなくて楽しみ。 映画の上映会も盛り上がれるので不定期でやれたらいいなあ。