in 『愛はさだめ、さだめは死』。 ジェイムズ・ティプトリー・Jrを読むのは初めて。
広告が厳しく制限された社会。 自殺未遂した醜い女P・バーグが、巨大企業に拾われて美少女の義体「デルフィ」をリモート操作させられる。
目的は世界に配信される彼女にさりげなく商品を身につけさせるステルスマーケティング。
だが、デルフィに恋してしまった御曹司ポールは義体の操縦者P・バーグの居場所を突き止め、誤解から彼女の神経ネットワークを引き裂いて殺害してしまう。かなり救いようのない物語。
現代で言い換えると、VTuberにガチ恋してしまったオタクが前世と知らずに中の人に出会ってしまい、勘違いで殺してしまう話になる。まさに予言のSF。
広告を規制しても抜け穴を見つける企業の狡猾さや、巨大資本に利用される個人の構図の生々しさ、アバターである理想の自分と現実のギャップなど、SNS時代に刺さるテーマが詰まっている。
これが1970年代に書かれてるのはティプトリーの先見性に脱帽するしかない。
醜い女性、義体との接続が切れても動いてしまう残留思念の描写から、飛浩隆「ラギッド・ガール」の元ネタであると思われる。
サイバーパンクの先駆け的作品と聞くし、いろんな作品に影響を与えてそう。おそらく攻殻機動隊もかな。
それにしても翻訳の問題なのかけっこう読みづらかった。古典はこういうのがあるよなー。
地の文が「オタクは〜」と語りかけてくる文体で、今となっては馬鹿にされてるみたいでじわる。